水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

バコパのはなし① アクアリストの知らない「細葉系バコパ」

バコパと言えば「丸葉で対性」だと思われがちですが,誤りです.

そもそもバコパ属のタイプ種であるBacopa aquaticaが細葉ですし,他にもアフリカ~南アジアのB. floribundaをはじめ細葉系Bacopaは沢山います.しかしながらアクアリストにこうした細葉系のBacopaバコパとして紹介されたことはいまだかつて一度もなく,誤った流通名で知られてきました.特に姿やサイズが近いポゴステモンと混同されやすかったようです.

では紹介をば.

 

バコパ・アクアティカ

Bacopa aquatica

現地名 Comida-de-tracajá

www.lachaussetterouge.fr

uk.inaturalist.org

分布:中米~南米北部,アフリカ中部~西アフリカ(B. decumbens,B. lacertosaをシノニムとした場合)

南米北部の比較的海岸にちかい氾濫原(狭義の場合)

 

形態:鋸歯をもつ2~6㎝の細長い葉を対性~三輪生させる15~40㎝の直立する草本です.形態にはバリエーションが大きく,葉の基部は細くなることも,茎を抱くこともあります.茎は艶が強く断面は丸く,葉には腺点を持ちます.バコパ属の雄蕊は基本的に4本ですが本種の場合5本となることもあり,例外的です.花は葉脇に1個~稀に2個ずつ,0.5~2㎝の柄の先につきます.ガクの直下には糸状で長さ1~3㎜の小苞をもちます.萼および花はBacopa属として特に変わったものではなく,花色やサイズをはじめ非常に変異幅が大きいのですが,雄蕊は狭義には5本とされます.花色はピンク~青~紫と様々です.

 

近似種

雄蕊が4本のものはB. stellarioides(4本で葉幅が狭い)やB. bacopoides4本で葉幅が広い)と呼ばれる場合があります.花柄の短いタイプはB. decumbensやB. lacertosaと呼ばれることもあります.B. decumbensを含むとした場合アフリカにまで分布が及びます.

B. gratioloidesは草体がよく似ていますが外側の萼片が披針形です.

アフリカ~アジアのB. floribundaもよく似ています.B. aquaticaの茎は光沢がありますが,B. floribundaの茎はざらつき,光沢はありません.またB. floribundaの花は明確に二唇形です.

 

アクアリウムにおいて

B. aquaticaは独特な種で,アクアリストの知るバコパとは大きく異なっています.

寸法や葉の形状,育ち方,伸び方(先端付近では節間が中途半端に詰まり,その後伸びていく)などはサンフランシスコ・グリーンステラータによく似ており,同種がおそらく旧ゴマノハグサ科であろうこと,またブラジルの旧ゴマノハグサ科に他のそれらしき水草が見当たらないこと,同種が3輪生になることがしばしばあったことから本種ではないかと現時点では推測しています.

尚,サンフランシスコ流域は本種の分布の南限です.

 

バコパ フロリブンダ

Bacopa floribunda

 

eol.org

www.botswanaflora.com

分布:熱帯アフリカ~熱帯アジア~北部オーストラリア

湿地や池,川の淵など

形態

細長い葉を対性させる高さ~40㎝の草本です.葉は1~4㎝,無柄で茎の断面は丸みを帯びた4角形,葉茎ともに光沢はありません.花は葉腋から5㎜ほどの柄をもち,その先につきます.萼片は2枚の細長い~3.5㎜のものと3枚の~6.5㎜のものからなります.花は二唇形で長さ4~6㎜,花色はピンク~青~紫と様々です.

 

近似種

アフリカではB. decumbens(≒B. aquatica)と同所的に生育します.アジアでは直立する細葉で花が有柄のバコパは他にないと思います.

 

アクアリウムにおいて

現地でもしばしば水中で生育し,(Kennedy & Murphy, 2012)アクアリウムプランツとして使われうる種と思います。

 

Souza VC, Giulietti AM. 2009. Levantamento das espécies de Scrophulariaceae sensu lato nativas do Brasil. Pesquisas, Botânica 60: 7–288.

https://www.zimbabweflora.co.zw/speciesdata/species.php?species_id=151310 2022/5/1閲覧

Kennedy, M. P., & Murphy, K. J. (2012). A picture guide to aquatic plants of Zambian rivers. SAFRASS Deliverable Report to the African, Caribbean and Pacific Group of States (ACP Group) Science and Technology Programme. University of Aberdeen, UK, 25.

ブラジル産バコパの種までの検索(日本語版)

バコパ語りをする前に,

まず南米産バコパの検索表を和訳しました.

基本的に南米のバコパはブラジルにはいるので,ほぼ南米産バコパを網羅している筈です.南の方だとアルゼンチンの文献も持ち合わせているのであとで追加します.

 

1.結実時,外側の萼片の基部は鋭角か丸みを帯びる.葉は半月形、線形、披針形、長楕円形、楕円形、卵形、またはこれらの中間形.葉縁は鋸歯状.葉の基部は鋭~鈍,円状など.

2.葉は対性.

3.背側の萼片の先端は球形(cochleariform)

・・・Bacopa cochlearia 

3.背側の萼片の先端は平坦

4.葉は有柄

・・・B. stricta

4.葉は無柄

5.茎下部は翼状となる

・・・B. angulata

5.茎下部に翼をもたない

6.花は無柄~柄は0.2㎝

7.花筒は0.1~0.15㎝

・・・B. monnierioides

8.萼片は4枚

・・・B. egensis

8.萼片は5枚

9.枝葉に剛毛をもつ

・・・B. congesta

9.枝葉は無毛~産毛をもつ

10.外側の萼片は披針形

11.10~15㎝の直立する草本,葉長は0.4~0.9㎝・・・B. depressa

11.25~60㎝の直立する草本.葉長は2.3~7.8㎝

・・・B. gratioloides

12.花は腋生で1つずつ着く(稀に2).ガクは0.2~0.3㎝,花冠は0.3~0.4㎝.

・・・B. sessiliflora

12.花は腋生で短い花柄を持ち,主枝の頂点付近に集中するが,株の下の枝の葉脇にも花をもつ

・・・B. pennellii

 

6. 0.25~3.3㎝の花柄をもつ

13.剛毛,軟毛または無毛,ビロード状,灰白色

14.葉は1.5~2.1㎝

15.葉の基部は細くなり,萼は無毛

・・・B. aquatica

15.葉の基部は耳状,萼は縁と中肋がわずかにざらつく

・・・B. scabra

14.葉は0.25~0.7㎝

16.葉の基部は鋭く,小苞はない.枝は無毛もしくは灰色で,子房にをとりまく剛毛はない

・・・B. reptans

16.葉の基部は丸く,基部は茎を不完全に巻く.小苞は1~2枚,枝の先端はビロード状

・・・B. arenaria

17.葉は線形~披針形

18.葉は鋸歯をもち,葉基部は耳状~亜耳状

・・・B.gracilis

17.葉は円形~卵形

19.葉は卵形,幅0.15~0.5㎝

・・・B. monnieri

19. 葉は円形~楕円形,幅1.1~1.6㎝

・・・B. rotundifolia

 

2.葉は3~12(14)輪生

20.羽状の葉

・・・B. reflexa

20.葉は線形~狭披針形

21.花は無柄~0.05㎝

・・・B. verticillata

22.花は0.4~2.2㎝の柄をもつ

22.葉は3輪生で1.5~5.7㎝・・・B. aquatica

23.葉は6~12(14)輪生で0.35~0.6(0.8)㎝

・・・B. myriophylloides

 

1.結実期の外側の萼片は基部が心臓形,葉は楕円形~長楕円形,葉は全縁で葉の基部は円形.

23.茎および花柄は軟毛~無毛.

24.雄蕊は2本,花柄は開花期に0.15~0.2㎝

・・・B. repens

24.雄蕊は4本,花柄は1.4~3.7㎝で雄蕊は4本

・・・B. australis

23.茎及び花柄はビロード状でトリコームは直立もしくはマット状

25.小苞はなく花冠は萼と同じ~1㎜長い程度,子房は剛毛に囲まれない・・・B. salzmannii

26.小苞はあり(ないこともある)子房は剛毛に囲まれ(しばしば多くの歯を持つ蜜腺と解釈される)る

26.葉は円形~楕円形・・・B. lanigera

26.楕円形~亜楕円形の葉

27.葉は1.5~2.1㎝で花冠は0.35~0.55㎝・・・B. caroliniana

28.葉は0.7~1.0㎝,花冠は0.7~1.0㎝・・・B. serpyllifolia

 

出典:Souza VC & Giulietti AM (2009) Levantamento das espécies de Scrophulariaceae sensu lato nativas 
do Brasil. Pesquisas, Botânica 60: 7-288.

 

ふぅ.翻訳つかれたあ~...印欧語の間では制度が高いらしいけど,英語→日本語の機械翻訳は正直あまり役に立たなかった.私はポルトガル語まったくわからないので翻訳サイトを使ったけれども,もしかするとポルトガル語→英語で誤訳があるかも.

検索表を訳するシリーズ,誤訳こそあれ多分需要があるので(???),時々やってみるのもありかもしれません.

バコパのはなし(イントロ)

バコパほど日本で軽視されている水草はないでしょう.

水草を主体としているグループながら,知名度があるのはウォーターバコパとモンニエリくらい.市場で見かけるのもそのくらいです.

 

なんとなく,バコパといえば丸い葉というイメージがあります.しかしこれは大きな誤りで,我々アクアリストに紹介されたバコパ属が丸葉のものばかりであるためです.バコパ属は丸葉の対性(Bacopa monnieriやBacopa carolinianaなど),細葉の対性(Bacopa aquatica, Bacopa floribundaなど),線形の輪生(Bacopa myriophylloides),分岐する輪生(Bacopa reflexa, Bacopa verticillata)など様々なものがあります.そして,どのタイプにも水中適応可能なものが含まれます.

ガク及び花弁は5放射状で花はしばしば二唇状,雄蕊は基本的に4本です.ガクはしばしば特徴的な構造をしています.ふつう,5放射状のうち3枚が突出して大きく,細長くなった2本は内側に入っており外側からはあまり見えません.そのためまるで三角テントのような構造になっており,三角テントの先端から花弁が覗くような咲き方をします.そのため,水辺でこういう花を見つけて,かつ旧ゴマノハグサ科っぽい花であれば高確率でBacopa属であるといえるでしょう.そもそもバコパとは,そもそも約60種と,水辺のオオバコ科で最多種数を誇る属です.同じオオバコ科であれだけ水草としてありふれたリムノフィラが約45種しかいないことを考えれば,

 

バコパこそ旧ゴマノハグサ科の王道」

であります.

 

あれだけ混沌としてオーバースプリットされている(と私は思っている)ブセファランドラで31種,クリプトコリネで68種.

この数字を見れば,バコパがこうした「コレクター植物」に匹敵する多様性をもつことが納得いくかと思います.

(ちなみに,種数で言ったら数百単位のホシクサ科が最強...)

 

さらに.

バコパは「人気がない」ゆえに,同一種とされているものの中にも広範なバリエーションがあります.しかも,グローバルワイドに分布しているものも多い.つまり...産地別コレクションのしがいがあるのです.インドのモンニエリ,ブラジルのモンニエリ,マダガスカルのモンニエリ.これだけでもやる気が起きてくる(?)コレクターは...いないか...やっぱり草体に個性がないって?

 

...

 

いやいや多様性は先述したように驚異的なものがあります.

沈水性のBacopa reflexaはミリオフィラムそっくりですし,Bacopa verticillataはアンブリア系のリムノフィラを彷彿とさせる姿です.B. aquaticaやB. floribundaはまるでポゴステモンのようで・・・

「みんな○○みたい」じゃん

えぇ・・・

しかし流行りとは,価値とは,コレクターとは,ブームとは.作り作られるものであって,自然にわいてくるものではないのです.

 

興味がないから,そういうブームの火付け役がいまだ現れていないから,そして何よりカネにならないから…バコパは軒並み「○○もどき」で済まされてしまい,コレクションの価値がない駄物として扱われ,中途半端なサイズからレイアウトにすら使われないのではないでしょうか.

というわけでここで唱えますよ,

バコパはいいぞ!,クリプト並みにはコレクション性があるぞ」

 

と.

 

 

というわけであらゆるニッチに進出したバコパの面々について述べていきましょう.

 

 

 

ネグロスター

有力候補としてSyngonanthus amazonicusを挙げてみる.

鑑別として,Syngonanthus trichophyllus を挙げてみる.

後者はRootsさんがあげている「頭花の細長いホシクサ」に当てはまるかもしれない気もするが,いかんせん何とも言い難く.

ペドラスター

候補としてSyngonanthus widgrenianusを挙げてみる.

 

https://imagemcampo.jbrj.gov.br/producao/imagens_de_campo/286668115.jpg

 

https://imagemcampo.jbrj.gov.br/producao/imagens_de_campo/286668116.jpg

 

鑑別として,Syngonanthus fischerianusを挙げてみる.

まだまだこういうのはいるかもしれないけれど.

エイクホルニア ディバーシフォリア

 

ディバーシフォリアとして入手しましたが、昔ながらの無印ディバーシフォリアのような展開をしてくれません。より小型で葉のカールが緩く、パンタナルギニアドワーフエイクホルニアっぽい、そんな感じなんですよね。

トニナspベレンに匹敵するカーリーな感じに育てたいものなのですが、これはどうも株のせいな気がします…。

 

栽培には若干の硬度を必要とする印象です。